本プロジェクトでは、国境を挟んだ保護者による親権争いに対する日米の政策を比較していきます。過去数十年の間にこの問題はますます差し迫ったものとなり、今や日本、アメリカに暮らす数百人の子供たちがその渦中にいます。この問題は国際離婚を協議中の両親など、異なる国籍を持つ保護者らが日米の二重国籍を持つ子供の親権問題で同意に至らない場合に発生するものですが、保護者の中には自分の法的要求を支持してくれる管轄国へ移住したり、裁判所命令を無視して「逃亡者犯罪人引渡し(刑事裁判権の及ばない領域に逃亡した者の身柄を管轄国へ引き渡す)」に協力しない国へ子供を拉致して連れ去る者まで出てきています。こうした「管轄国選び」や「子供の拉致」などの複雑な問題は日米の法律制度の根本的な違いや文化基準の相違を浮き彫りにするもので、今こそ両国の政治家や外交に携わる者、弁護士、また当事者である家族らがこの問題を改めて見直す時期に来ているのではないでしょうか。共に世界の経済大国であり、戦後の日本の民主化を機に価値観を共有してきた両国ですが、この問題に対しては異なる政策をとってきました。国際的な法的合意の支持、子供の利益を最優先とする主張の内容、問題の解決手法においても両国の反応は異なっているのです。また当事者である両親、弁護士および一般大衆の反応も、両国政府の反応と同様に、日米の文化的相違を反映しています。本プロジェクトでは、両国の異なる文化、政治および法律的背景がこの問題、国籍と家族の関係に影響を及ぼしていると仮定します。

リサーチ方法はマルチサイトの民族学的メソッドを基に設計し、特に国境を挟んだ親権争いの渦中にある家族同士の関わり合いを取材する予定です。このようなケースが増える一方で、両国の政治家に対して調停を求める圧力が国内外から強まっています。本プロジェクトは日本とアメリカ両国に政策提言を行うことで、一般に受け入れられやすい学術研究にすることをゴールとします。